三浦しをん「むかしのはなし」感想




モモちゃんのセリフが忘れられない

「欲しいなら、お前にやるよ」

「お互いの夢を交換するのもいいだろ」

この物語はすべて
「今『昔話』を語り変えるなら」
という話で

その中で「匿名性を入れている」と
作者の辻村さんは話す

だから、語り手も、
モモちゃんも
びっくりするほどその顔がイメージできない
「像を結ばない」というけど
まさにそうだ

これだけの描写力のある人だ
人物のイメージを持たせられない
なんてことはない

むしろ、描写力があると
「部分的に抜く」ということも
出来るということで、末恐ろしい

モモちゃんの
「欲しいなら、お前にやるよ」
のシーンは

パーンと、視界が開ける感覚があり
気負わず座っているモモちゃん
その背後に屋上が見えるが
その顔はのっぺらぼうなのである

「とてもきれい」な鳥子ですら
その顔は見えず
ワンピースの色だけが張り付いている

脇役の方がまだ
顔がイメージできるレベルだ

『昔話』というのは
解釈がたくさんある話だ

桃太郎も、今では「暴力的」とされるが
モモちゃんもぞっとするような
残虐性を見せる

七夕を下地にした「ディスタンス」も
10歳離れた恋人の話だが
女性の方は高校生であり
その関係は小学生時代からあった

ディスタンスの主人公は
それでも彼の事を信じている

彼女は最後に聞き手である
カウンセラーに
「さあ、分析して」
という

私はここで言葉に詰まってしまう

あの話の悪はなんだったのだろう
真実はなんだったのだろう

グルグルと考えてしまう

そういえば章タイトルも秀逸で
「ラブレス」「ディスタンス」などで

私は「安いタイトルだ」と思った
我ながら偉そうだが

語呂が良く短く意味も中高生から理解できる
こういった単語は
J-POPや雑誌やらで消費つくされ
安い文字列になったと感じる

あいうえおは、ABCはフリー素材だから
使う側の色に染まってしまう

そういう文字列を選択したのは
間違いなく「あえて」で
「昔話」の匿名性や消費度に
合わせたのではないかと思う










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